ガンと心
つくばセントラル病院
院長 竹島 徹
「人は一生の間に数回以上ガンにかかっており、その都度、免疫の力で治癒している」とは今も確実であろうとされている仮説であります。
腎臓移植を受けた患者に必要な免疫抑制剤の長期運用によって、ガンが多発するという事実も明らかにされています。
難病のガンに対する治療は、現在のところ手術や放射線、抗ガン剤が主流ですが、免疫療法も補助的には、行われています。生体には、ガンをガンであると識別する免疫機構が存在することも、いわれています。
免疫というのは、人間それ自身がもつ自然治療力の大きな要素です。ガンの綱引きの相手としての免疫を考えるとき、心とからだを含む生命それ自体が持つ免疫力、生命力に想いを至さざるを得ないのです。
ガンと心について話す前に、一般的なことを話します。ガンにはなりにくい(遠い)人となりやすい(近い)人がいます。体質といってよいかもしれません。
例えば男性よりも女性の方がガンになりにくい、ガンに遠いといわれます。ただ男性でもおつむの毛の薄い人は、ガンに遠いようです。「ハゲにガンなし、白髪に卒中なし」ということばがあります。かつてある大学医学部から、ハゲにガンが少ないという研究発表がされています。
またタバコを吸わない人もガンになりにくい。更に果物や野菜を好きな人もガンになりにくい。ビタミンCがある程度ガン予防の効果があるのではないかといわれます。一方、緑黄色野菜もガン予防効果ありとされています。ほうれん草、にんじん、ピーマン、かぼちゃ、わかめなどの中に含まれるベータカロチンが、活性酸素の働きを抑えて、ガン予防に働く、それだけでなくて、動脈硬化を防ぎ、老化を防止するといわれています。
また、とうふやみそ汁の好きな人もガンになりにくい、牛乳も少しガンを予防します。これらは、故平山雄博士のぼう大な研究による結果です。
脂肪のとり過ぎ、肥満に注意し、できるだけ散歩を心がけるなども医学的根拠を持っています。塩分を少な目にする、肉より魚など、博士によればいずれもガンになりにくい項目なのです。実はこうして見てくると、これらのことに気をつけると、そのまま動脈硬化、高血圧を防ぎ、ひいては長寿のための秘訣ということになります。
したがって、若い時から頭の髪がうすくて(若ハゲ)、タバコを吸わず、果物、緑黄色野菜、とうふ、魚が好きな方は、確率的にもかなりガンになりにくい、そしてひいては長寿に向かっている、と言うことになると思います。もう一方、心理的な面からいえば、なかなか自分の心の発散ができない人、心のくらい人、うつうつと心がこもりがちの人は、ガンになりやすい(近い)といわれます。「ガンと心」を特集したドイツの医学書に、30年間にわたって、延べ1万2000人の患者を調査した結果が報告されています。ガン患者は、幼児期に親とわかれるなどの厳しい人間関係があって、抑制的性格の人が多い、失感情症、うつ病などの心理は、まさに現代人のものと重なり合っていると、鋭く指摘されています。
ナチュラルキラー細胞というリンパ球があります。この細胞は健康人にも存在しガンをやっつける正義の味方です。最近の動物実験からこの細胞の活性は、ストレスの有無に左右されることが分かってきたのです。ガンとストレス、ガンと心の因果関係を類推する知見も出てきつつあるということだと思います。
上に述べた心理状態とは、幼少期とその後成人するまでの欲求不満(貧欲)や瞋りや、それと気づかない愚痴が抑圧されて発散できない状態ともいえるのではないでしょうか。心に不満や怒りや憎悪が、うっ積してくれば、免疫能力も低下してくる。心の傷は体の傷となってあらわれてくるといえるのではないでしょうか。
ある医師が、”自然退縮”といって、ガン細胞が体内にあるにもかかわらず、積極的に治療しないでいながら、ガン細胞の成長がとまり、逆に縮小したケース26人の患者を調べたところ、共通点が二つあったということです。一つはどのケースも免疫能力が異常に強い、二つは性格的に強く、絶望感に陥ったり、ふさぎこんだりしないことだったといいます。
ガン患者が一緒になって、モンブランに登ったりなど、積極的にガンと戦い、目標を持って生きるなどの、”生きがい療法”を実践しているグループもあると聞いたことがあります。医学の治療分野としては、未開拓分野かもしれません。
しかし故ノーマンカズン氏は、彼の研究結果を通して、希望、歓び、生への意欲、確信、愛情などの肯定的感情は免疫力を高め、「治療系」と「確信系」が共同して、病気の治療に働くと述べています。
ガンの予防といって、もちろん確実なことは一つもないのですが、「ガンと食物」、「ガンと心」までについて医学的に解明されてきたことを、ふまえて前向きに生きていけたなら、必ずその人の人生にプラスになるだろうと考えます。
皆様のご健康を心より祈っております。
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