循環器内科 田中 千博(かずひろ)
βブロッカーは,交感神経の抑制作用を介して頻脈の抑制・降圧作用・心筋酸素消費量の抑制を狙ったものであります。β受容体は3つのサブタイプに別れ,β1・β2・β3と言います。β1は心筋・脂肪細胞に存在し,β2は肺・血管・気管支・子宮に,β3は脂肪細胞・胃腸管に存在します。
降圧作用はいまだ十分に明らかにされていませんが,心拍出量低下に伴った複合的な作用からといわれ,頻脈系の方に向いています。反面心気亢進を押さえるため,やや感情に乏しくなるとも言われています。さらに,β3とβ1ともに脂肪分解促進に働くため,これらを抑制すると脂肪分解能が低下し痩せづらくなりますので,肥満気味の方にはお勧めできません。
降圧効果としてはカルシウム拮抗剤や,ACE・ARBに比べると非常にマイルドな薬剤です。このためもあって最近は処方される事が殆ど無くなっていました。
ところが,10年前より拡張型心筋症や虚血性心筋症で心不全を合併される方に使用すると,心不全が改善されることが示されました。β1選択性阻害剤がよいと当初言われていましたが,非選択性であるインデラルを使用しても同じ効果が得られたのには私も驚かされました。少量から使用し,なれれば増量する方が良いと今では効能効果に書いてありますが,当初その量が解らなくて心不全を一時期増悪させた思い出があります。
しかし量を減らさずに点滴治療をおこなったところ心不全は改善し,点滴から離脱でき,かつ経過を見ていたところ拡大していた左室も縮小傾向にあり,心拍出量も増加していました。頻回に入退院を繰り返していた方もそれなりに外来で経過観察できるようになったのには驚きました。βブロッカーの機序からすると心拍出量低下のはずが,かえって良くなっているのですから。最近はこのことから心不全患者には積極的に使用するようになっています。しかしやはり高齢患者にとってはこの作用も限定的です。必ずしも夢の薬では無いことは肝に銘じなければなりません。
また虚血性心疾患でも,異形狭心症に使用してはいけないことになっています。動脈硬化性狭心症なら良いのですが,異形狭心症ではかえってスパズムを増悪させる恐れがあるからです。
このため異形狭心症にはカルシウム拮抗剤を使用します。しかしカルシウム拮抗剤でも心拍数を抑えるヘルベッサーが一番効果的なことは,必ずしもβブロッカーが悪いわけでは無いのでしょう。10年前には否定されていたことが,10年後には全く逆の事を言われると戸惑ってしまうものですが,日々頭を柔軟にしておかなければならないのでしょう。
次回は高脂血症についてお話しします。
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