産婦人科

母乳育児

どうして母乳がいいの?

感染から赤ちゃんを守ります!

母乳の中には感染を妨げる因子がたくさん含まれています(免疫グロブリンや生きた免疫細胞、ラクトフェリン、その他)。人工栄養の赤ちゃんと比べて感染症にかかりにくく、かかっても早く治ります。赤ちゃんにとってこの世に生まれて最初の予防接種のような意味があります。感染予防効果は初乳以降も何年も続きます。

赤ちゃんに合わせて変化します!

月齢とともに母乳は変化し続けます。1回の授乳でも、はじめはさっぱりした味で赤ちゃんの渇きをいやし、最後は脂肪分が増えてこってりした味で満腹感を出すといわれています。赤ちゃんのためのオーダーメイドです。人工乳だといつも 同じ味、同じ成分です。

アレルギーから赤ちゃんを守ります!

人工乳は牛乳、大豆からできているので、異種タンパクによるアレルギーの危険があります。特に生まれて早い時期に使えば使うほど危険が高くなるといわれています。母乳のみで育つと喘息などのアレルギー疾患のリスクが低くなります。

赤ちゃんにいいことがたくさんあります!

  • ・乳児突然死の危険がすくない
  • ・糖尿病、肥満、小児がん(白血病、リンパ腫)になりにくい
  • ・神経発達に重要。 母乳で育つとより知能が高い、と報告
  • ・将来のメタボリック症候群の予防

ママにもいいことがいろいろあります!!

  • ・子宮が早くもどり、出血も早く止まります
  • ・妊娠中についた脂肪がどんどんとれて自然にダイエットできます
  • ・排卵がおさえられ避妊効果が
  • ・乳癌、卵巣癌の予防
  • ・骨粗しょう症や糖尿病、関節リウマチ、高血圧、高脂肪、心血管系疾患の予防
  • ・産後うつ病になりにくいと報告
  • ・夜中の授乳が楽チン

他にもいいことがたくさん!!

  • ・人工乳、哺乳瓶、調乳用品がいらない
  • ・ママも赤ちゃんも病気しにくいので、医療費も節約!
  • ・働くママの欠勤が減る
  • ・環境にもやさしい(ごみが出ない、お湯を沸かす燃料がいらない、人工乳は流通にもエネルギー必要)
  • ・災害などのときに手に入らなくなる心配がない

※参考文献

  • 1. UNICEF/WHO母乳育児支援ガイド医学書院2009
  • 2. American Academy of Pediatrics,Section on Breastfeeding.Breastfeeding and the use of human milk. Pediatrics,115(2):496-506.2005.(日本語訳)「母乳と母乳育児に関する方針宣言」2005年改訂版. アメリカ小児科学会、母乳育児部会. http://www.jalc-net.jp/dl/AAP2009-2.pdf(2011年4月10日検索)

母乳で育てるにはどうしたらいいの?

母乳はでる人とでない人がいると思われてますが、そうではありません。母乳で育てるためにはいくつかのポイントがあるので、それを守ればほとんどの人が母乳で育てることができます。

母乳で育てる!と決める!

妊娠中からあなたの周りの赤ちゃんにかかわるすべての人と、赤ちゃんの栄養法について話し合いましょう。母乳で育てたいことを伝えておきましょう。

お産直後から赤ちゃんと一緒になってどんどん授乳する

早く授乳するほど早く出てきます。赤ちゃんが欲しがったらどんどん授乳することで、母乳が出るようになります。作られた母乳がしっかり飲みとられないと新しいものが作られないので、適切な抱き方や乳首のくわえさせ方が大切です。

妊娠中から授乳のイメージ作りをする

母乳育児をしている知り合いの話を聞いたり、授乳を見学したりもいいですね。人形をつかって抱き方や含ませ方の練習もできます。

不必要な人工乳をあげない

赤ちゃんはおっぱいがたくさん出はじめるまでの3日間のお弁当と水筒をもってうまれてくる、といわれるように、おっぱいをしっかり飲みとっていれば、その他の水分を与えなくても脱水にはなりません。むしろ生後早期から哺乳瓶で人工乳を与えると、母乳で育てる妨げになるといわれてます。

困ったときの相談先をみつける

母乳育児は長丁場。困ったときや悩んだときに気軽に相談できるとうんと楽に続けられます。当院では母乳育児のあらゆる悩みやトラブルに対応できます。 (国際認定ラクテーション・コンサルタントという母乳育児の専門家が産婦人科医・助産師にいます)母乳で育てているお母さん同士のつながりは大きな助けになります。

※参考文献

  • 1. International Lactation Consultant Association/日本ラクテーション・コンサルタント協会訳、生後14日間の母乳育児援助.エビデンスに基づくガイドライン.日本ラクテーション・コンサルタント協会、2003

母乳で育てるのに参考になるものあるかしら?

妊娠中から参考になる本を読んだり、インターネットのサイトを見たりしてみてもいいですね。以下の本は外来の待合室にも置いてあります。

改訂版だれでもできる母乳育児

ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル
メディカ出版 2,400円

世界的な母乳育児の支援団体である「ラ・レーチェ・リーグ」による本です。母乳育児の経験者ならではの視点で、妊娠中から卒乳までの具体的なアドバイスがいっぱいです。

新・母乳育児なんでもQ&A

日本母乳の会 編 1,300円

母乳育児中の様々な悩みにQ&A形式で答えます。写真や絵も多く読みやすい本です。

母乳のほうが楽だった?!おっぱいでらくらくすくすく育児

金森あかね、北野万寿美 著
メディカ出版 1,400円

国際ラクテーション・コンサルタントによる母乳育児の本。気軽に読めます。

母乳育児のすべて お母さんになるあなたへ

米国小児科学会 編
メディカ出版 2,600円

最新の医学研究と豊かな経験の蓄積にもとづいて、 母乳で子どもを育てるために必要な知識とコツをきめこまやかに 示した信頼の1冊。

ラ・レーチェ・リーグ日本

https://llljapan.org

日本ラクテーション・コンサルタント協会

https://www.jalc-net.jp

母乳育児支援ネットワーク

https://bonyuikuji.net

母乳育児成功のための10か条(WHO/UNICEF)

当院は母乳育児を推進しており、WHO/ユニセフの「母乳育児を成功させるための10か条」 に準じたケアを目指しています。母乳育児支援の国際資格である「国際認定ラクテーション・コンサルタント」 を持つスタッフが産婦人科医師、助産師におり、母乳育児のスタートから卒乳までお手伝いいたします。

この10か条は、お母さんが赤ちゃんを母乳で育てられるよう、産科施設とそこで働く職員が実行すべきことを具体的に示したものです。

  1. 母乳育児推進の方針を文書にして、すべての関係職員がいつでも確認できるようにしましょう。
  2. この方針を実施するうえで必要な知識と技術をすべての関係職員に指導しましょう。
  3. すべての妊婦さんに母乳で育てる利点とその方法を教えましょう。
  4. お母さんを助けて、分娩後30分以内に赤ちゃんに母乳をあげられるようにしましょう。
  5. 母乳の飲ませ方を実地に指導しましょう。もし赤ちゃんをお母さんから離して収容しなければならない場合にも、お母さんに母乳の分泌維持の方法を教えましょう。
  6. 医学的に必要でないかぎり、新生児には母乳以外の栄養や水分を与えないようにしましょう。
  7. お母さんと赤ちゃんが一緒にいられるように、終日、母子同室を実施しましょう。
  8. 赤ちゃんが欲しがるときは、いつでもお母さんが母乳を飲ませてあげられるようにしましょう。
  9. 母乳で育てている赤ちゃんにゴムの乳首やおしゃぶりを与えないようにしましょう。
  10. 母乳で育てるお母さんのための支援グループ作りを助け、お母さんが退院するときにそれらのグループを紹介しましょう。

つくばセントラル病院 母乳育児基本方針案

基本理念

つくばセントラル病院(以下本院という)は、豊かな母子関係を育むために WHO/UNICEF共同声明の「母乳育児を成功させるための10カ条」に沿って母乳育児を保護・推進・支援します。

基本方針

  • 1. 職員への周知

    本方針を当院の全職員に周知するよう努めます。

  • 2. 技術および知識の研鑽

    母乳育児に関わる全スタッフが、常に新しい技術と知識を共有できるように学習の機会をもうけます。

  • 3. 母親の選択を尊重

    母乳育児に関する十分な情報を妊婦さんに提供したうえで、最終的に母親が選択した栄養方法を尊重し支援します。

  • 4. 授乳の開始

    本院は、どのような分娩方法であっても、可能な限り出生後の母子早期接触、初回授乳ができるように支援します。

  • 5. 母子同室・自律授乳

    本院は、可能な限り出生直後から母子同室を実施し、赤ちゃんが欲しがる時にいつでも授乳できるように支援します。

  • 6. 人工乳・人工乳首等の安易な使用の禁止

    本院は、母乳で育てられている赤ちゃんには人工乳首やおしゃぶりを安易に与えないようにします。赤ちゃんが母乳育児の恩恵をより多く得られるように支援し、医学的に必要のない限り母乳以外のものは与えないよう努力します。

  • 7. 母乳代用品の販売、流通に関する国際基準の遵守

    本院は、人工乳が安易に与えられることなく、人工乳の適正な使用を守るため、国際基準で明記されている「人工乳の無料サンプルや支給品の受け取り・宣伝」を禁止します。

  • 8. 母乳育児が困難な母子への支援

    本院は、母乳育児が困難な母子にたいしては、母乳以外の栄養であっても母子関係を支え、育児を支援します。

  • 9. 母親および家族への継続した支援

    本院は、地域と連携して妊娠・出産・産後も継続して母乳育児を支援します。

  • 10. 母親同士の交流の推進

    本院は、妊婦健診・母親教室などを活用し、母親同士の交流、情報交換を支援します。