産婦人科

赤ちゃんの健康管理について

赤ちゃんの健康管理について

ご妊娠、ご出産おめでとうございます。
生まれた赤ちゃんの診療に携わっております小児科の久松 聖人と申します。

2016年4月から、当院で産科医・助産師の協力のもと、赤ちゃんの診療を行っております。それ以前は、獨協医科大学病院総合周産期母子医療センターNICU(新生児集中治療室)に5年ほど勤務、周産期医療に従事しておりました。その経験を基に、赤ちゃんの初診・退診、リスクのある分娩時の立会い、精査が必要な赤ちゃんに対する各種検査、病児の治療、必要時は授乳プランへの介入などを行っております。 当院の赤ちゃんの診療の中で特筆すべきことの一つは、充実したスタッフ陣容です。昭和大学医学部附属病院、筑波大学医学部附属病院のNICUでの経験豊富な医師と協力して日々の診療を行っております。

産科が他の診療科と大きく異なることは、基本的にはhappyということです。しかし、お母さんのお腹から外へ出て、新しい生活へ適応することは、赤ちゃんにとって簡単ではないのです。そのような適応過程の問題を含め、生まれた後の様々な問題に対して、お手伝いが必要なことは少なくありません。2021年度の当院分娩件数は、388件でした。そのうち、以下にお示しするような赤ちゃんの代表的な病気で、何かしらのお手伝いが必要であった児(病児)は、190人とほぼ2人に1人でした。その中でより高度な医療が必要で、総合周産期母子医療センターへ搬送が必要になった赤ちゃんは7人、約1.8%でした。介入が必要な赤ちゃんを早くに見つけ、適切なお手伝いを行い、お母様と赤ちゃんが元気に退院できるようにする。それが私たちの仕事です。

以下、代表的な赤ちゃんの病気をお示しします。ご参照ください。

早産児

お母さんのお腹の中にいた期間(在胎週数)が37週未満で生まれた赤ちゃんのことです。週数が早いほど機能的に未熟であり、お腹の外での生活(胎外生活)に困難をきたします。在胎週数35~36週で生まれた赤ちゃんは、比較的機能は成熟しており、一般分娩施設で、お母さんと一緒に退院を目指せることが多く、当院でも対応しております。しかし、正期産(在胎週数37~41週)に比べて、体温が下がりやすい(低体温)、血糖が上がらない(低血糖)、哺乳が下手で体重がなかなか増えない(哺乳緩慢→体重増加不良)、生まれた時から呼吸が悪い(呼吸障害)、鉄分の蓄えが十分でないため、後に貧血になる(鉄欠乏性貧血)などが起こりやすく、注意が必要です。早産児では、次に説明いたします「低出生体重児」にも該当していることがあります。

低出生体重児

生まれた時の体重(出生体重)が2500g未満の赤ちゃんのことです。在胎週数は問いません。「早産児」にも該当していることがあります。早産児同様に、低体温、低血糖のリスクがあります。正期産であっても、在胎週数よりも有意に小さい赤ちゃんは、低血糖が強く、長引くことが多い傾向にあります。また、在胎週数よりも身長・体重の両者が有意に小さい(SGA)場合、将来身長が伸び悩む(SGA性低身長)ことがあり、フォローが必要です。当院では、およそ体重が2000g以上の児に対応しております。

新生児仮死

生まれたときに赤ちゃんが泣かず、ぐったりとした状態です。赤ちゃんの状態を生後1分、5分、必要時は10分と経時的にスコアで評価(Apgar score)し、呼吸をアシストする「蘇生」と言われる処置を行っていきます。一般的に、生まれてくる赤ちゃんの10人に1人は、何かしらの蘇生処置を要すると言われております。重度の新生児仮死を防ぐため、状況に応じた判断と適切な蘇生手技は極めて重要であり、当院では小児科医のみでなく、産科医・助産師も定期的に新生児蘇生法の講習会を受け、その技能を発揮しております。

新生児呼吸障害

赤ちゃんの呼吸が苦しくなること(呼吸障害)は結果であり、その原因は多岐に渡ります。赤ちゃんの酸素の値が低い(低酸素血症)、呼吸が速くなる(多呼吸)、胸をへこませる、(陥没呼吸)、鼻をぴくつかせる(鼻翼呼吸)、唸り声をあげる(呻吟)などの症状を認めます。赤ちゃんを保育器(赤ちゃんが入る箱型のお部屋)に収容、モニターを装着して、状態を注意深く観察、必要があれば赤ちゃんに酸素を投与します。症状が強い場合や長引く場合は、各種検査による原因検索を行います。多くの赤ちゃんが時間とともに呼吸が安定してくることが多いですが、呼吸補助が必要になってくることもあり、その場合は高次医療機関(周産期母子医療センター)にご紹介させていただきます。

新生児無呼吸発作

もともと赤ちゃんの呼吸は一定のリズムではないことが知られています。しかし、20秒以上の呼吸停止(停止していなくとも極めて浅く有効な換気でない場合を含む)、もしくはそれ以内であっても心臓の動きが遅くなること(徐脈)や酸素の値が低くなり皮膚色不良(チアノーゼ)となれば、新生児無呼吸発作と判断します。多くは明らかな原因のない一時的なもの(生後の適応過程の問題)で、生後1週間以内に自然消失してきます。しかし、中には赤ちゃんがばい菌にかかっている、頭の中の大きな出血、血糖が低いなど治療を要するものが含まれていることがあります。各種検査の上、モニターを装着して児の状態観察を行い、必要時に赤ちゃんに刺激を加えて覚醒させます。無呼吸を起こさなくなったと判断されれば退院可能となります。

先天性心疾患

心臓に何かしらの構造異常を持って生まれてくる赤ちゃんは100人に1人程度いらっしゃいます。大きな構造異常(複雑心奇形)はお母さんの検診で見つかることが多いですが、中にはお母さんのお腹の中にいる時には診断がつきにくい、生後でないと診断がつかないものも多くあります。生後早期に介入が必要な先天性心疾患は限られております。心室と呼ばれる壁に穴が開いているタイプ(心室中隔欠損症)は頻度が多く、当院では毎年10人前後いらっしゃいます。日々のバイタル測定や心臓の音を確認することで、心臓超音波検査による診断につなげております。なお、当院には小児循環器外来があり、退院後のフォローをお願いしております。

新生児嘔吐

生後数日の赤ちゃんは吐きやすく、その嘔吐のほとんどは初期嘔吐と呼ばれる生理的なもので自然とおさまります。注意が必要な嘔吐は、緑色のものを吐く胆汁性嘔吐や強いお腹の張り(腹部膨満)を伴うものです。赤ちゃんの病気の中に、生まれつき腸が閉鎖や狭窄しているもの(先天性消化管閉鎖・狭窄)や腸が捻じれてしまうもの(捻転)があり、これらは緊急手術を要するため、高次医療機関(周産期母子医療センター)へ速やかにご紹介する必要があります。また、比較的頻度の高いものに、血糖が低いにも関わらず哺乳すると吐いてしまうものがあります。病的な嘔吐でなくとも、点滴が必要なことがあります。

新生児黄疸

最も頻度の高い赤ちゃんが治療を要する状態です。赤ちゃんの皮膚が目に見えて黄色くなることを黄疸と言います。種々の要因で、ほとんどの赤ちゃんが黄色くなるので、生理的現象とも言えるのですが、その程度には個人差があります。極端に黄色くなりすぎると、聴力や発達に影響を及ぼすことがあるので、黄疸の値を1日複数回確認、値が高ければ、光を浴びる光線療法という治療を行います。中には、赤ちゃんの血液が壊れる溶血という現象が起きて、生後早期から黄疸が強く出てくる(早発性黄疸)お子さんもおり、その場合は検査を頻回に行い、光の強さを強めて対応します。

新生児低血糖

生後数日の間、赤ちゃんの血糖は低くなりがちです。血糖が低いことにより、赤ちゃんに何らかの症状(眠りがち、不穏、無呼吸、けいれんなど)が出現することを症候性低血糖と呼び、そのような状態が続くことは、発達に悪影響を及ぼす可能性があります。明らかな症状がない低血糖(無症候性けいれん)も含めて、血糖を上げる対応が必要になります。低血糖になりやすいリスクが存在しますが、目に見えるリスクがない赤ちゃんでも、血糖測定すると低い値が出ることがあります。当院では、そのような赤ちゃんを見逃さないために、赤ちゃん全員の血糖測定を生まれた翌日に行うようにしています。実際に血糖が低い場合は、哺乳量upや分割授乳、輸液などで対応します。

新生児感染症

お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんを包んでいる膜が破れることを破水と言います。破水が起きてから赤ちゃんが生まれるまでの時間が長いと、子宮の一部、赤ちゃんを包んでいる膜、羊水、赤ちゃん自身へとばい菌の感染が波及(子宮内感染)していきます。そのため、破水された場合は早めにお産になるように産科医が陣痛促進剤を用いるなど対応をします。当院では、生まれた赤ちゃんに感染が起きていないかを確認するため、モニターを装着して状態観察を行う、へその緒や赤ちゃん自身から血液検査を行うなどして早期発見に努めております。また、赤ちゃんの感染が疑われる場合には、ばい菌をやっつける薬(抗菌薬)を投与します。